会社で商品やサービスを購入する際に欠かせない領収書。お金のやり取りを記載した書類のため、ビジネスをする上で大切な役割を持っています。
領収書は発行の際に印鑑を押すことが一般的ですが、法律上、必要なのでしょうか?もし誤って印鑑を押し忘れた場合、領収書としての効力がないのかどうか…。ビジネスパーソンなら押さえておきたい知識ですよね。
そこでこの記事は、領収書に印鑑は必要かどうかについて解説します。他にも記事では、領収書の押印に適した印鑑や押印の方法についても紹介しています。ぜひ最後までご覧ください。
インボイスとしての領収書発行に印鑑は必要?不要?
領収書とは、「商品やサービスに対して金銭を支払ったことを記載した書類」のことです。書類を発行することで「代金を支払った」ことの証明になり、代金の過払いを未然に防止できます。
では「領収書に印鑑が必要か?」というと、実は法律上、必要ではありません。領収書に記載する内容は、主に次の項目になります。
・領収書を発行する社名と住所
・取引をした年月日
・取引内容
・金額
・領収書の宛名
上記の項目が入っていれば、領収書としての効力が得られます。
しかし「どの領収書を見ても印鑑が押されているような気がする…」と思う人は多いでしょう。法的に必要ないはずなのに、なぜ領収書に押印するのか。それは、「偽造防止」や「信頼性を高めること」を目的としているからです。
もしも領収書に会社の印影がなかったら、改ざんや複製など誰でも簡単に偽造できてしまいます。また、領収書が偽造されてしまうと会社の信用にも大きくかかわります。偽造した会社の納める税金が減ってしまったり、不正に経費精算した社員にお金が振り込まれてしまったり、などの問題が発生します。
そこで領収書に印鑑を押すことで偽造防止の効果が期待でき、「会社が正式に発効した書類である」ことを証明できます。また、「領収書=印鑑の押印」が長らく商習慣として根付いている、という背景もあります。
ちなみに、インボイスとして領収書を発行する際も、押印は必須ではありません。インボイスとは「事業者が消費税を誰に、何%で、いくら払ったか」を把握するため、消費税率や税額を記載した「適格請求書」のこと。これを交付し保存することを定めたのが「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」です。
インボイス発行の事業者同士が取引する際、買手側に発行を求められた場合、売手側は適格請求書(インボイス)の発行と保存が義務付けられています。適格請求書には、事業者名や取引年月日、登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額などの記載が必要ですが、印鑑の押印は義務ではありません。ただし前述(偽造防止、信頼性を高める)の理由から、社内規定で「領収書に印鑑が必要」としている企業もあります。インボイスとして領収書を発行する際も、押印を心がけましょう。
領収書に押す印鑑の種類は?
企業が領収書に押印する場合、「角印」を使うのが一般的です。角印とは「◎◎◎◎株式会社之印」など社名を印面に彫刻したもの。代表者印と違って正式に届け出が必要なものではないため、会社の認印という位置づけになります。角印は領収書の他、見積書や発注書などにも用いられます。
一方、法人用の印鑑として「代表者印」もありますが、こちらは契約書など企業として正式に作成、発行した文書に押す場合に使います。領収書への押印は一般的ではありません。また、法人用の銀行印も法人口座に関する手続きや手形などの発行時に使うものです。領収書に押すのは控えるようにしましょう。
個人事業主やフリーランスが領収書に押す印鑑も、「角印」が一般的です。彼らが用いる角印の場合、法人と同じ形状の「角印タイプ」と、個人用の認印を法人の角印として使用する「丸印タイプ」があります。前者の角印タイプを使用すると、取引先から「この個人事業主なら安心できる」という印象を与えられ、ビジネスが有利に働くことが期待できます。個人事業主が角印を製作する際は、印面に屋号やショップ名を彫刻します。用途は領収書の他、見積書や契約書など対外的に発行する書類に押します。
領収書に押す印鑑の位置はどこ?
領収書に角印を押す位置については決まったルールがありません。
領収書に押印欄がある場合は、欄内に収まるように角印を押します。押印欄が設けられていない場合は、社名または住所と角印が重なるように押します。これは文字と印影を重ねることで、印鑑の複写や領収書の改ざんを防ぐためです。なお領収書への押印は、会社の代表者でなくとも代理人が押しても構いません。
個人事業主が押印する場合、押印欄が設けられないときは氏名や屋号の隣に角印を押すのが一般的です。また、領収書で書き間違いをした場合は、訂正用に角印を用います。まず二重線を引いてその上から訂正印を押します。そして上段に正しい内容を記載すれば修正完了です。訂正印は、角印の他、発行担当者の個人印を使用することも可能です。
領収書に印鑑を押すことで偽造防止の効果が期待できる
ここまで、領収書に印鑑が必要かどうかについて解説しました。
まとめると、領収書への押印は義務ではありません。必要な項目が記載されていれば、印影のある無しにかかわらず領収書としての効力があります。とはいえ、偽造防止や商慣習上の理由から、領収書への押印は一般的となっています。印鑑を使用する際は、社名が印面に入った「角印」を使うようにしましょう。
ところで、今回記事で紹介した以外にも、領収書に印鑑を用いるケースがあります。それは収入印紙を貼付するとき。領収書と収入印紙をまたぐようにして消印(割印)を押さなければなりません(自署でも可)。消印は印紙税法で定められており、押すことで納税したことを証明できます。
知識として覚えておくと、いざという時に対応できますよ。