
日常生活の中で当たり前のように使われている印鑑。
家を購入する際に契約書に実印を押したり、銀行印で新しく口座を開設したり、宅配便の荷物の受け取りで認印を押したり……と、印鑑は様々な場面で役立っています。
ところで、海外で印鑑は使われているのでしょうか? そもそも印鑑は「自分の意思を表す担保」という目的で使用しますが、海外では同様のツールとしてサイン(署名)がポピュラーとされています。ひょっとして、印鑑を使うのは日本だけなのでしょうか……?
そこでこの記事は、「印鑑は海外でも使われているのか」について、日本の印鑑の歴史を交えながら紹介します。
印鑑のルーツはどこ?
日常生活の中で当たり前のように使われている印鑑。
家を購入する際に契約書に実印を押したり、銀行印で新しく口座を開設したり、宅配便の荷物の受け取りで認印を押したり……と、印鑑は様々な場面で役立っています。
ところで、海外で印鑑は使われているのでしょうか? そもそも印鑑は「自分の意思を表す担保」という目的で使用しますが、海外では同様のツールとしてサイン(署名)がポピュラーとされています。ひょっとして、印鑑を使うのは日本だけなのでしょうか……?
そこでこの記事は、「印鑑は海外でも使われているのか」について、日本の印鑑の歴史を交えながら紹介します。
印鑑のルーツは古代メソポタミアと言われています。当時使われていた印鑑は「円筒印章」というもので、これは円筒形の外周部分に絵や文字を刻み、粘土板の上に転がして押すという使い方でした。円筒印章を持っていたのは当時の有力者達。自分独自の印章にひもを通して、首に掛け、必要に応じて使用していたそうです。
この頃の印鑑は現在のような「自分の意思を表す」という機能ではなく、壺や袋の結び目に貼りつけた粘土に押して「カギ」としての役目を負っていたのではないかと言われています。
このように所有者や責任者を示すために、粘土に押して封印したものを「封泥」と呼びます。この「封泥」は倉庫などのドアにも施されていたそうです。紀元前6000年頃から印鑑はすでに所有者、責任者を示す大切な役割を担っていたのではないかと推測されます。

その後、印鑑は世界各地に広まり、東はシルクロード、中国を経て日本へ、西はギリシア、エジプト、ローマを経て欧州各地に影響を与えました。
日本の他に印鑑が使われている国は?
それでは現在、印鑑はどの国で使われているのでしょうか?
日本では実印を使う際、印鑑登録が必要ですが、世界中でこういった制度があるのは、日本と韓国、台湾、中国のアジアの4地域だけです。
ただし中国は公印(法人印)のみの印鑑登録制度に限られ、個人の場合は印鑑ではなくサイン(自署)で決裁をおこないます。また、台湾では電子署名法により、印鑑と手書きの電子サインの両立が可能になっています。t
このように、制度としての印鑑のニーズは決して多くはないようですが、一方で、赤ちゃんの誕生記念として印鑑を贈ったり、記念スタンプを押したりと、印鑑そのものの文化は各地域で根付いています。
ヨーロッパやアメリカなどの西洋でも、日本のような印鑑登録制度がありません。そのため契約書に実印を押すといった行為はなく、サインを用います。

ただし、封蝋やスタンプとしての文化は今も残っています。「封蝋」(ふうろう)とは、封筒など封緘する部分に熱で溶かしたワックスを垂らして付着させ、その上から金属型のスタンプを押すというもの。これは「シーリングスタンプ」とも呼ばれ、手紙や文書の封緘、高級酒の封などに使われています。
日本の印鑑の始まりは
ところで、日本で印鑑が使われるようになったのはいつからでしょうか?
日本最古の印章は、「漢倭奴国王(かんのわのなのこくおう)」と刻まれた黄金の印。古代の日本の王が中国皇帝から授かったもので、18世紀に福岡県志賀島の水田から発見されました。現在は福岡市博物館に保存展示されています。
紙への捺印具ではなく封印用と言われていますが、金印には解明されていない謎が多く、そもそも本物ではないという真贋論争も起きています。
奈良・平安時代では、印鑑は政治や律令制定などで重要な役割を占めるようになります。当時はまだ貴族や大名など権力者だけのアイテムでしたが、江戸時代初期に入ると農民が自ら彫刻したものを文書に捺印するようになるなど、少しずつ一般庶民へと広がっていきます。
明治に入ると、さらに印鑑、捺印の重要性が高まります。そのきっかけになったのが、明治4年の「太政官布告」です。個人の印鑑を庄屋や年寄りなどに登録し、何かあったときに照合するという現在の印鑑登録制度の基礎が作られました。
これ以降も太政官布告は印鑑に関係する法令をいくつか布告。そしてサインよりもハンコを重視する方向を決定づけたのが、明治6年10月1日に発布された太政官布告です。

ここでは「証書には必ず実印を捺すこと」とし、実印のない証書は法律上、証拠とならないと定めました。この布告が事実上の日本の印鑑登録制度の誕生となります。
海外で「印を押す」文化はある
ここまで、「印鑑は海外でも使われているのか」について紹介しました。
日本のような印鑑登録制度があるのは、韓国や中国などアジアの一部に限られ、実印のような使い方をするのは世界の中ではごくわずかです。
ただし、制度としてではなく、趣味用に印鑑を押す文化は、様々な国で使われています。ヨーロッパでは手紙や文書の封緘に用いる「シーリングスタンプ」が文化として残っています。
日本において、印鑑やスタンプを押す行為は「楽しいもの」として根付いていますが、それは海外でも同じなのかもしれませんね。