
新しい家の購入や銀行の口座開設など、重要な場面に欠かせないのが印鑑。「自分の意思を表す担保」として押す印鑑は、まさに自分の分身のような存在と言えます。
そんな印鑑が、もし誰かの手に渡って悪用されたとしたらどうでしょうか? 考えただけでも恐ろしいですよね。
そこでこの記事は、印鑑の悪用を防ぐための方法についてまとめました。記事の後半では、悪用されにくい印鑑の選び方について紹介していますので、これから印鑑を買う予定の方も、ぜひ参考にしてください。
印鑑の悪用を防ぐにはどうすればいい?
印鑑を悪用されないために、まず前提として「実印と銀行印を1つの印鑑で兼用しない」ようにしましょう。
一見便利に思えるかもしれませんが、印鑑を兼用することで、使う頻度が増えるため盗難や紛失のリスクが高まります。誰かに印鑑を盗まれて、知らないうちに印鑑登録証明書(印鑑証明書)が発行されたり、預金が引き出されたり……と被害も大きくなります。
また、そうなった場合、悪用されるのを防ぐために印鑑登録した市町村役場や、銀行印を届け出ている金融機関に利用停止の手続きをしなければなりません。1つの印鑑で兼用することで、かえって手間がかかってしまうのです。
実印と銀行印は必ず別々に用意しておきましょう。
お手持ちの印鑑を悪用されないために気を付けることは、
1、自分だけしか分からない場所に保管する
2、保管先をむやみに口外しない
この2点を徹底することです。
まず1について。できるだけ人の目に触れないところに保管することが大切です。
その際は実印と銀行印をそれぞれ分けて保管するのがベスト。また、実印は印鑑証明書とセットにすることで大きな効力を持つので、まとめて管理するのは危険です。印鑑証明の印影から実印同様の印鑑を偽造することは不可能ではないのです。

また銀行印も通帳と一緒に保管すると、悪用されるリスクが高まります。できるだけ別の場所に分けて保管することをお勧めします。
保管は自宅にある金庫か、金融機関の貸金庫を利用します。貸金庫は利用料金がかかりますが、自宅に保管するよりもセキュリティ面で安全です。
次に2について。友人や知人にはもちろんですが、身内でもむやみに口外しないようにしましょう。実は「印鑑証明書が知らないうちに発行された」「銀行預金が引き出された」というトラブルは、身内の犯行が多いのです。例えば外出中、急に実印が必要になったというケース。身内に「実印を届けて欲しい」と金庫の暗証番号を教えたら財産がなくなっていた……。どこでどんなトラブルが起こるか分かりません。どれだけ気心の知れた身内でも、口外は禁物と肝に命じておきましょう。
悪用されにくい印鑑の選び方
実は、悪用されにくい印鑑があります。それは「篆書体」で名前を彫った印鑑。
印面に彫る書体の種類は一般的に6~7書体あり、それぞれの文字には特徴があります。「このハンコにこの書体は使えない」などという決まりはありませんが、実印の場合、篆書体が主流です。
篆書体とは、秦の時代、始皇帝の大臣李斯の手によって統一された歴史のある文字のこと。楷書体や行書体と比べると字形が別物で、まるで暗号のようです。篆書体が実印用の印鑑によく使われている理由は、「一般の人が読みにくく偽造しにくい」という特性があるから。認印など重要な契約で使わないものは、相手に判読しやすい楷書体や行書体が一般的ですが、実印は篆書体がお勧めと言えます。t
また、実印を作る際、姓のみや名のみを彫っても問題はありませんが、偽造されにくいようにフルネームで作成する人も多いです。名前を組み合わせることで判読がより難しくなるわけです。実印を作る時は「フルネームで篆書体」と覚えておきましょう。
もう1つ、暗号と言えば「印相体」も実印の書体として有効です。印相体は篆書体から派生して作られた書体で、印鑑の枠の部分に文字を接しているのが特徴です。開運用の印鑑の書体としてもおなじみです。篆書体のように文字が読みにくいので、悪用される心配は少ないでしょう。

ちなみに100円ショップに行くと、既製の印鑑が販売されていますよね。実はこういった安物の印鑑でも登録さえしてしまえば、実印として使うことができます。
しかし、既製の印鑑は世の中に多く出回っているため、登録すると偽造のリスクが高まります。既製印は誰でも簡単に買えてしまうので、自分になりすまして悪用される危険性があるわけです。
印鑑を買うなら、100円ショップなどではなく、専門のはんこ屋さんで買うようにしましょう。
印面の彫刻は、「機械彫り」と職人さんが手がけた「手彫り」があります。セキュリティの面を考えると、同じ印面にならない手彫りがお勧めです。機械彫りに比べると価格は高くなりますが、「悪用されたくない」という方は手彫りで印鑑を作ってもらいましょう。
印鑑をしっかり管理して悪用されないようにしよう
ここまで、印鑑の悪用を防ぐ方法について紹介しました。
ポイントは、実印と銀行印を1つの印鑑で兼用しないこと。
また、
・自分だけしか分からない場所に保管する
・保管先をむやみに口外しない
これをしっかり徹底すれば、悪用されにくくなります。
実印や銀行印は大きな効力を持っているので、あっちにもこっちにも捺印すると人の目に触れやすくなり、悪用されるリスクが高まります。できるだけ人の目に触れないところに保管し、重要な場面の時だけ使うようにしましょう。