印鑑の書体の印相体って?

印鑑にはさまざまな書体が使われています。

毛筆で書かれたような筆致の「楷書体」や、印面に文字に丸みがあり認印でよく使われる「古印体」など、どれも個性的です。新しい印鑑を買うときは、印鑑の材質だけじゃなく書体にもこだわりたいですよね。

ところで書体には「印相体」と呼ばれるものがありますが、どういったものかご存じでしょうか? 現代の文字とは異なる複雑な字形をしているので、「格式張っている」「高級な印鑑にしか使えない?」……などのイメージを持つ方もいるかもしれません。

そこでこの記事は、印鑑の書体である「印相体」について詳しく紹介します。記事の後半では、印鑑でよく使われる他の書体についても解説しているので、ぜひご覧ください。

易占的な要素を持った印相体?

印相体は「篆書体」から派生して作られた書体で、大正から昭和初期に考え出されたと推測されています(篆書体については後述します)。

印相体の大きな特徴と言えば、文字が印面の枠に接していること。中心から外に八方に流れるような字形で、「八方篆書体」「吉相体」と呼ばれることもありますが、なぜ、このような字形をしているのでしょうか? それは家相や姓名学のように、所持(使用)している印鑑が後天的に運勢を左右すると考えて、易占的な要素を取り入れているからです。

印鑑の円形を占いの八方位に見立て、その方角の枠に文字の端をつけることで、運勢の吉凶を表します。例えば、枠と文字の接点がどの方角に接しているか、あるいは接していないか。さらに姓名判断の文字の画数や、四柱推命の生年月日の運気と方位などをかけ合わせて印影を作るのが一般的とされています。

こうした理由から、印相体は開運用の印鑑の書体として使われることが多いです。また、篆書体をベースにした書体や字形のため、他の書体に比べて可読性が低く偽造や盗難防止にも効果が高いと言われています。

印鑑の匠ドットコムでも、印相体を扱っています。文字の特性上、文字の大きさが他の書体のように選択できず、「大きめ」のみとなります。

また、数年に1回程ですが、印相体で印鑑を作ると市区町村から「実印登録ができない」と言われる場合があります。その際はご連絡ください。

印相体だけじゃない、印鑑に使われる書体

印鑑には、印相体の他にもさまざまな書体が使われています。ここからは代表的な書体を5つご紹介します。

篆書体

秦の時代に統一された公式書体です。印鑑の書体の定番として最も人気があります。文字の太さが一定の縦長の字で、可読性が低く、偽造や盗用防止にも効果的です。篆書体は「大篆」とそれを簡略化した「小篆」とに大別され、印鑑では一般的に小篆が使われます。ちなみに、パスポートの表紙に印刷された「日本国旅券」の文字は篆書体です。

古印体

隷書体を元にして日本で独自に作られたと言われる書体です。鋳造印に見られる特有の欠けや途切れなどの風味を元に作られた線の強弱が特徴です。風雅な味わいで「大和古印体」と呼ばれることもあります。可読性が高く、認印などでよく使われています。

隷書体

前漢時代に「小篆」が簡略化されて生まれた実用的文字です。左右に払い出す波磔(はたく)と、波を打つようなリズムを持つ波勢(はせい)があり、 字が横長なのが特徴です。

行書体

隷書体を早書きに適するように簡略化した書体です。線が連続したり省略されたりと、流れるような柔らかいイメージが特徴で、女性に人気があります。隷書体と比べると可読性が低くなります。

楷書体

隷書体を元にして作られた筆文字の書体です。一点一画を離して、きちんと書くことで生まれた文字です。読みやすく、認印などでよく使われています。

印鑑の匠ドットコムでは、ここで紹介した書体を扱っています。いずれの書体も「ひらがな」「かたかな」「ローマ字」「数字」などで使用可能です。ローマ字で印鑑を作る場合、縦彫りにすると文字が見づらくなるので、可読性が高い横彫りで作成するのがおすすめです。

印相体、篆書体、古印体…好みの書体で印鑑を作ろう

ここまで、印鑑に使われている書体、「印相体」について紹介しました。

印相体は篆書体をベースに作られたもので、文字が印面の枠に接した書体です。易占的な要素を取り入れており、中心から外に八方に流れるような字形をしています。開運用の印鑑の書体として使われることが多く、また可読性が低いため、偽造防止の効果も期待できます。

印鑑は他にも篆書体や古印体、隷書体など、さまざまな書体があります。

この印鑑にはこの書体はダメ、といった決まりはありませんが、例えば就職して認印を新たに作る場合、篆書など判読しにくい文字ではなく、古印体や楷書体などの読みやすい文字を選ぶなど、印鑑の使い方によって書体を決めるといいですね。

一方で実印を作るなら、一般の人が読みにくく偽造されにくい篆書体や印相体などを選ぶといいでしょう。