会社でよく使われるハンコと言えば、「角印(かくいん)」や「丸印(まるいん)」があります。「か一見、形が違うだけでは」と思いがちですが、実は角印と丸印には明確な違いがあることをご存じでしょうか。
そこでこの記事は、法人印鑑における角印と丸印の違いについて紹介します。
さらに、それぞれの役割によって使い方も変わってくるので注意が必要です。
両者の役割の違いや正しい使い分け、購入時の選び方についても解説しているのでご覧ください。
法人印鑑の角印と丸印、どんな役割があるの?
印面が四角い形をした角印と、印面が円状になった丸印。
両者の決定的な違いは、「角印が認印」で「丸印が実印」ということです。角印は認印の役割を持つので、印鑑を登録する必要がありません。一方、丸印は印鑑登録が必要です。この違いによって両者の法的効力も大きく変わってきます。
具体的な特徴について見てみましょう。
まず角印。見た目が大きく立派なので会社を代表する印鑑に見えますが、実は会社の認印にあたります。これは「社印」とも呼ばれています。
法人用の角印は、個人の実印や会社の丸印のように自治体や法務局で登録が定められていません。しかし印鑑登録していなくとも、その押印によって効力が発揮されることに変わりはありません。みだりに押すことは控えましょう。
角印の印面には、「○○株式会社之印」や「合同会社◎◎◎印」など、法人名や屋号が入ります。この末尾の「之印」や「印」は、印鑑であることを示すために昔から使われているものです。
一方で、丸印は法務局に届出(登記)した実印で、「代表者印」とも呼ばれます。代表者の意思決定が必要な場面で用いられ、社会的責任や義務を負う役割があります。そのため、他人に悪用されないよう厳重に管理することが不可欠です。
サイズに規定があり、「辺の長さが1cmの正方形に収まるもの、または辺の長さが3cmの正方形に収まらないものであってはならない」(商業登記規則第9条)とされています。丸印の印面には、外枠に会社名や屋号が、内枠には役職名が入ります。
このように「角印は認印」で「丸印は実印」のため、印鑑を押したときの法的効力は大きく違います。
丸印は印鑑登録しているので、本人であることの証明が可能です。契約書などに押印する際は、印鑑証明書を添付することで法的効力が高まります。一方、角印は本人の証明ができないので、法的に不利になる可能性があります。
ところで「丸印」の名称は、個人用途で使う印鑑でも丸印(丸い印鑑)と呼ばれるので、押印するとき混同しないように気を付けましょう。また、新たに丸印の印鑑を専門店などで注文する場合、法人用か個人用かをはっきりとお店に伝えると、作り間違いのトラブルがありません。
角印と丸印を契約書に押すときの使い分けは?
契約書など書類に印鑑を押す場合、角印と丸印どちらを使えばいいのでしょうか。それは契約書の内容によって押す印鑑が変わってきます。
角印は、見積書や請求書、領収書など、社外に対して発行する文書に押印します。主に自社が発行する書類に用い、丸印よりも様々な場面で広く活用されます。また、代表者の決済が不要な契約書にも角印が使われます。
丸印は、登記申請や株券発行、連帯保証契約の締結など、重要な契約や取引の際に使用します。代表取締役を変更する場合にも丸印が必要です。
日常的なビジネス書類には角印を、会社を代表して重要な契約をおこなうときは丸印を、とそれぞれ覚えておきましょう。
書類だけでなく、印鑑の押し方にも注意が必要です。角印の場合は、印字した文字に重ねて押します。これは文書を偽造されないようにするためです。会社名や住所の右側に、文字に少し重ねるように押印するとよいでしょう。
逆に丸印は、印字した文字と重ならないように押します。丸印の場合、印鑑証明書と印影を照合しますが、文字に重ねて押すと印影が正しくチェックできないため、必ず文字から離して丸印を押しましょう。その際は、会社名や住所の右側にある余白部分に押印するのがベターです。
もし角印と丸印を押し間違えた場合、まず間違えた印影に二重線を引き、印影に重ねるように同じ印鑑を押します。これにより「訂正した」ことを表します。そして余白に正しい印鑑を押して、完了となります。
角印と丸印のおすすめの材質は?
法人用の角印と丸印は長年使用するものです。新しく印鑑を作る場合は、チタンや黒水牛、黒彩樺など、できるだけ耐久性の高い材質のものを選びましょう。変形しやすいゴム素材のものや、朱肉を使わない浸透印タイプは法人印には適さないので、注意が必要です。
角印の場合、サイズの決まりはありませんが、一辺が18㎜、21mm、24mm、27mmの正方形のものが一般的です。印面には法人名や屋号を彫刻します。文字のレイアウトは縦書きが一般的ですが、カタカナや英字の法人名などは横書きにすると見栄えがいいです。
丸印は法務局で登録する際、「辺の長さが1cmの正方形に収まるもの、または辺の長さが3cmの正方形に収まらないものであってはならない」とされています。
規定外のサイズでは登録できないので、印鑑の専門店で注文するときは、「会社の丸印(代表者印・実印)を作ってほしい」とはっきり伝えましょう。形状は円形が一般的で、直径16.5mm、18mm、21mmなどのサイズがよく使われています。
角印も丸印も印面に彫る書体の決まりはありませんが、風格があり偽造されにくい篆書体や古印体などを選ぶ会社が多いようです。
角印と丸印の違いを覚えて、きちんと使い分けよう
ここまで、法人印鑑における角印と丸印の違いについて説明しました。
ここで紹介した知識を持っていれば、取引先から「押印をお願いします」と依頼されたときも、角印と丸印のどちらを押せばいいかの判断に迷いません。
また、会社を新たに設立するときにも、この知識が役立ちます。丸印は法人登記が必要で重要な契約時に用います。角印は書類を使った対外的なやりとりに欠かせない認印です。
両方の役割や使い分けを覚えておくことで、スムーズに会社設立の準備ができるはずです。