引っ越ししたら印鑑登録の変更は必要?

結婚を機にマイホームを建てる、就職や転職にあわせて新しい家に移り住む……。こうした新たなスタートを切るとき、欠かせないのが「引っ越し」ですよね。物件を決めたり、荷造りをしたり、不用品を処分したりと、引っ越しは膨大な準備が必要です。

その引っ越しの準備で見落としがちなのが、「印鑑登録」

印鑑登録とは、住民登録のある市区町村役場に印鑑を届け出ること。申請に通った印鑑は実印として使うことができます。では、引っ越しをすれば印鑑登録の変更が必要なのでしょうか? 実は変更が必要な場合と、そうでない場合の2種類があるのです。

この記事では、引っ越しに伴う印鑑登録の変更について紹介します。手続きの流れや、変更の際に必要なものについても解説しますので、最後までご覧ください。

引っ越しで印鑑登録の手続きはいる?県外や区内による違いは?

印鑑登録は、お住まいの地域の管轄である市区町村に印鑑を届け出て、手続きをおこないます。引っ越せばその住所が変わるのだから、印鑑登録も変更しないと……と思いますよね。

ところが、必ずしもそうとは限りません。下記のように、印鑑登録の変更が必要な場合と不要な場合に分かれます。

1、別の市区町村での引っ越し…印鑑登録の変更が必要

2、同じ市区町村での引っ越し…印鑑登録の変更が不要

詳しく見ていきましょう。

「1、別の市区町村での引っ越し」の場合、まず旧住所の自治体で印鑑登録を抹消(廃止)し、その後、新住所の管轄である自治体で新しい印鑑登録をおこないます

「印鑑登録の抹消」については、特別に手続きをする必要はありません。自治体に「転出届」を提出し受理されたら、自動で印鑑登録も抹消されるからです。「本当に抹消されているか不安」「念には念を入れて自分で手続きしたい」という方は、窓口で印鑑登録の廃止申請をすることもできます。

手持ちの印鑑登録証(印鑑登録カード)は、自治体に返却するか、裁断などで廃棄します。自治体によって対応が異なるので、転出届を出す際に聞いておきましょう。

一方で、「2、同じ市区町村での引っ越し」の場合は、印鑑登録の変更手続きが不要です。

自治体に「転居届」を提出して受理されると、印鑑登録の住所も自動的に新住所に変更されます。手持ちの印鑑登録証もこれまで通り使用できます。

ただし、政令指定都市や東京都の23区に住んでいる場合、同じ市内への転居でも区が異なると手続きが必要なこともあります。上記に該当する方は、管轄の自治体に確認しておくと安心です。

印鑑登録の申請に必要なもの

「1、別の市区町村での引っ越し」に該当する方は、新住所での印鑑登録を新たにする必要があります。このとき、「転入届」の手続きと一緒に登録をおこなえば、何度も自治体に行かずに済みます。

印鑑登録は、本人による申請と、代理人による申請が可能です。郵送での手続きはできません。申請に必要なものは、

登録する印鑑

本人確認書(マイナンバーカード、日本国発行のパスポート、運転免許証、在留カードなど)

印鑑登録申請書(自治体の窓口に備え付けの書類)

本人確認書類を提出するとき、マイナンバーカードや運転免許証などの写真付き身分証明書(官公署が発行したもの)だと、即日で印鑑登録が完了できます。それ以外の本人確認書類だと、登録に日数がかかります。急ぎで印鑑登録を済ませたい方は気を付けましょう。

ちなみにマイナンバーカードも、引っ越しの際は変更の手続きが必要です(引っ越しから14日以内に手続きを怠った場合、マイナンバーカードが失効するので注意)。

印鑑を実印として登録する場合、自治体によって様々な決まりがあります。気を付けたいのが、「各市区町村によってルールが規定されている」こと。

例えば同じ内容の印鑑でも、A市では登録できてB市では登録できないことがあります。「旧住所で使っていた実印と同じサイズなら、新しい住所先でも登録できるはず」と思わずに、自治体に確認しましょう。

登録できる印鑑のサイズは、「一辺の長さが8mmの正方形に収まらず、25mmの正方形からはみ出さないもの」と定める自治体が一般的です。

他にも印鑑登録の条件について、多くの自治体が共通して次のように定めています。

・市区町村に住民登録している15歳以上が登録できる。ただし「意思能力を有しない者」は登録できない。

・同一世帯で同じ印鑑は登録できない。

・登録できる印は1人1点に限定する。

・ゴム印など印面が柔軟なもので、押し方によって印影に相違が生ずるものは登録できない。また摩滅しやすい印材のものも登録できない。

・判読できない文字は不可。

これらのポイントを押さえておくと、印鑑登録をする際に役立ちます。

ちなみに登録できる印鑑は、引っ越す前に使っていた実印を再び登録することもできますし、新しい印鑑で登録することもできます。引っ越しのタイミングで実印も替えると、心がリフレッシュして、新たな気持ちで毎日が送れそうですね!

引っ越しをしたら印鑑証明書も使えなくなる

ここまで、引っ越しに伴う印鑑登録の変更について紹介しました。

「別の市区町村」に引っ越しをするときは、印鑑登録の変更が「必要」です。自治体に転出届を出すと、登録済みの印鑑が自動的に抹消されます。新住所へ引っ越したら、最寄りの自治体で新たに印鑑登録をおこないましょう。

一方、「同じ市区町村」に引っ越しをするときは、印鑑登録の変更が「不要」です。自治体に転居届を出すと、印鑑登録の住所も自動的に新住所に変更されます。手持ちの印鑑登録証もこれまで通り使用できます。ただし、政令指定都市や東京都の23区に居住していて、同じ区町内で引っ越しするとき、手続きが必要な場合もあります。

印鑑登録は、各自治体の条例によって規定されています。手続きのルールや登録できる印鑑の条件など、自治体で異なる場合があるので、事前に確認しておくといいですよ。

ところで引っ越しをした後、「新車を買う」「住宅ローンを組む」といったこともあると思います。この場合、実印や印鑑証明書(印鑑登録証明書)が必要ですが、印鑑登録の手続きが完了していないと、印鑑を実印として使うことができません。印鑑証明書も発行できないので、早めに手続きをしておきましょう。

なお、旧住所が記載された印鑑証明書は、引っ越し後には使えなくなります。現住所の入った証明書のみ効力があるのでご注意ください。古い印鑑証明書は、混同を防ぐためにシュレッダーなどで破棄しておくと安心です。